ジーの謎

野蛮人クリーム?」では地名に由来する食べ物をいくつかご紹介しましたが、布地や服の名前にも地名に由来するものが意外と多くあります。

セーターに良く使われる毛織物「cashmere(カシミア)」はインドの「Kashmir(カシミール)」、綿織物の「muslin(モスリン)」はイラク北部の都市「Mosul(モスル)」にそれぞれ由来、消毒に使う「Gaze〔独〕(ガーゼ)」(英語は「gauze(ゴーズ)」)も一説にはパレスチナの「Gaza(ガザ)」地区で初めて作られたことからその名が付きました。なぜか紛争の多いところばかりですね。ジーンズの布地として使われる「Denim(デニム)」もちょっとひねりがあるものの地名。フランス語の「de Nîme(ドゥ・ニーム=ニームの)」がなまって出来た言葉です。

では服の名前はどうでしょうか。運動着の「jersey(ジャージー=ジャージ)」は英仏海峡に浮かぶ「Jersey(ジャージー)」島で作られていた毛織物。アメリカのニュー・ジャージー州や良質の乳を出すジャージー牛もこの島の名に因みます。「tuxedo(タキシード)」はニューヨークのタキシード公園に集うお金持ちたちのクラブのパーティウェアとして着用されたことから。ほとんど日本語と化している「背広」も、一説によると紳士服の仕立屋が建ち並ぶロンドンの「Savile Row(サヴィル・ロー)」に由来します(異説も多くあります)。

「jeans(ジーンズ)」はイタリアの港町「Genova(ジェノバ)」に由来。直接にはフランス語の「Gênes(ジェーヌ)」が語源です。もともとジェノバで織られた生地で作られていたからという説と、ジーンズのインディゴ・ブルーがジェノバの船員のセーラー服を思い起こさせるからという説とがあります。

さてこのジーンズのことを和製英語で「ジーパン」と言いますが、この「ジー」とは一体何を意味するのでしょうか?単純に「ジーンズ・パンツ」の略だとも言われますが、面白いのはもう一つの説。英語に「goverment issue(=官給品)」を表す「GI」という略語があって、これが「アメリカ兵」の俗称としても使われます。「GI Joe(ジーアイ・ジョー)」という兵士のフィギュアもありますね(因みに「GI Joe」とは「男性兵」の俗称で、「女性兵」は「GI Jane(ジーアイ・ジェーン)」もしくは「GI Joan(ジーアイ・ジョーン)」です)。というわけで、戦後日本に駐留していた米兵のはいているパンツが「GIパンツ」と呼ばれ、さらに短縮されたのが「Gパン」なのです。