発明家列伝

18世紀のイギリスの外交官「John Montagu Sandwich」伯爵が、賭博中に席を離れるのが嫌で給仕に作らせたのが「sandwich(サンドウィッチ)」というのは超有名な逸話ですね。英語にはもともと「sand(サンド=砂)」という単語が有るにもかかわらず「ham sand(ハム・サンド)」「club sand(クラブ・サンド)」などの派生語を生み出したのは偉大とも言えるでしょう(そのまま訳せば「ハム砂」「クラブ砂」ですものねー ^^;)。

このように人名から語句が派生すること(あるいは由来となった人のこと)を「eponym(エポニム)」と呼びますが、英語には人名に由来する語が35,000語以上あると言われています。その多くは専門用語なのですが、いくつか身近なものをご紹介しましょう。

19世紀米国コネチカット州の機関銃の発明者「Benjamin Hotchkiss」さんが機関銃の弾送り機構を応用して発明したのが「Hotchkiss(ホッチキス)」。しかし彼の祖国アメリカでは現在は「stapler(ステイプラー)」と言わなければ通じません。日本語に「私刑」と訳される「lynch(リンチ)」も意外にも人名。米国バージニア州の判事「William Lynch」氏が法に定められていない残虐な刑を課したことに由来します。その他の発明家たちを表にしてみました。

名称 発明者
saxophone(サキソフォン) Adolphe Sax(1814-94、ベルギー人、楽器メーカー)
jacuzzi(ジャクージ→ジャグジー) Candido Jácuzzi(1903-86、イタリア系アメリカ人、実業家)
cardigan(カーディガン) James Cardigan(1797-1868、イギリス人、伯爵、軍人)
leotard(レオタード) Jules Léotard(1842-70、フランス人、曲芸師)
bloomers(ブルーマーズ→ブルマ) Amelia Bloomer(1818-94、アメリカ人、女権運動家)

因みにLéotardさんは男性です ^^;)。ドラゴンボールの登場人物「ブルマ」も、(姓と名という違いはあるけど)まんざら変な名前では無いのですね。作者の鳥山明さんは言葉遊びがお好きなようで、主人公の孫悟空は「サイヤ(←野菜)」人、サイヤ人の王子が「ベジータ(←vegitable=野菜)」、悟空の本名は「カカロット(←carrot=人参)」、お兄さんは「ラディッツ(←radish=大根)」といった具合。というわけでブルマの息子の名は「トランクス(trunks)」。発明者の名前でこそありませんが色々な意味を持つ面白い単語で、車のトランク、スーツケースのトランクも同じ単語です。但し、この間お店でトランクスを買おうとしたら(注:私は現在カナダに住んでいます)、トランクスでは通じませんでした。こちらでは「boxers(ボクサーズ)」と呼ばれているそうな。

話が変な方向にそれてしまいましたが、最後にとどめの一発。一説によると「condom(コンドーム)」は、18世紀の医者「Condom」さんあるいは「Conton」さんが発明したのだそうで、当時は羊、やぎ、牛の盲腸から作っていたのだとか。でも(おそらく)一頭から一枚しか取れないわけだからきっと貴重なものだったんでしょうね。因みに私のイチオシの語源説は、日本語の「今度生む」→「こんどうむ」→「コンドーム」です(°・°)ノ


おまけ ― 日本版サンドイッチとも言えるのが「鉄火巻き」。「鉄火場(=賭博場)」で手を汚さずに食べることが出来るものとして発明されました。但し他にも、マグロの赤い色からの連想、鉄砲の砲身のイメージ、など諸説あります。