片足フラフラの法則

ヨーロッパはベネルクス三国の一つベルギー王国。ここは、主にフラマン語(オランダ語の方言)を話すゲルマン系住民の多い北部のフランデレン地域と、フランス語を話すケルト系住民が住む南部のワロン地域とに二分されます。EUの本部がベルギーの首都ブリュッセルに置かれているのは、このように同国がヨーロッパの二大文化であるゲルマンとラテンの境界に位置することも影響しているようです。

この北部地域を指す「Vlaanderen(フランデレン)」はフラマン語の名称であって、フランス語では「Flandre(フランドル)」、英語では「Flanders(フランダース)」と呼ばれます。往年のアニメ「フランダースの犬」の舞台はフランデレン地方のアントワープ近郊。その中でアントワープの聖堂に飾られていた絵の作者ルーベンスは、フランドル絵画を代表する画家です。

フランス語の「Flandre」の形容詞形が「Flamand(フラマン)」、フラマン語の名前自体がフランス語で知られているというところが興味深いですね。前述の「フランダースの犬」のオープニングソング中のコーラス「Zingen, Zingen, Kleine Vlinders(ジンゲン、ジンゲン、クレイーヌ・ヴリンダース)」もフラマン語(「歌え小さな蝶々」という意味)です。また、英語の「Flanders」の形容詞形は「Flemish(フレミッシュ)」または「Fleming(フレミング)」。電磁気学の右手・左手の法則で有名なイギリスの物理学者「John Fleming(ジョン・フレミング)」の先祖は、フランドル地方からやってきたのでしょう。

スペインのアンダルシア地方の情熱的な踊りとして有名な「Flamenco(フラメンコ)」、ジプシー芸能に起源を持つとされていますが、この語も元は「フラマン人」という意味。ジプシーがフランドル地方から来ていたと思われていたからとも、ジプシーの派手な衣装からフラマン人を連想したとも言われます。さらにピンク色の美しい羽根が特徴の鳥「Flamingo(フラミンゴ)」も、(異説はありますが)「フラマン人の赤ら顔」を想起して名付けられたとされます(英語の「flame(フレーム=炎)」)にあたる単語からとの説もあり)。「ローマへの道」でご紹介した、民族名を語源とする単語の一種ですね。

ところでフラミンゴは片足をたたんで寝ることでもよく知られています。「フラフラしながら眠る」鳥、略して「フラ眠児」というのが日本語起源説ですが(笑)、このような鳥は、北半球では左足、南半球では右足を上げると決まっているのだとか。これを「フラミンゴの右足・左足の法則」と言うのだそうです ( -o-)ノ