押すか回すか

キーボードの秘密」ではパソコンのキーボードに関する雑学をご紹介しましたが、今回は「ダイヤル」に関する豆知識です。ダイヤルと言えばまず電話のダイヤルを思い浮かべる方が多いと思いますが、プッシュホンの数字の配列と、パソコンのテンキーの配列が違うということ、お気付きでしたか?

プッシュホン テンキー

プッシュホンが上から1〜9、0と並んでいるのに対し、テンキーは下から順に0〜9となっています。プッシュホンの配列は回転式のダイヤルだった時代の名残り。指で回したダイヤルが元の位置に戻る力により発生させたパルスを利用して交換局に番号を伝送する方式では、「0」を0回のパルスで表すということが出来ないため、代わりに10回のパルスで「0」を表していたのです。というわけで「0」は「9」の次に無ければならなかったというわけ。一方のテンキーにはそのような制約は無かったものの、特に金銭処理のためにオペレータが良く使う「0」を手前に持ってきたために下から数字が並んでいます。

警察の110番、消防の119番も回転式ダイヤル時代に決められたもの。緊急電話のために早くダイヤルできる「1」を2回、そして最後に利用者が心を落ち着かせることができるようにと、ダイヤルを回す距離が最も長い「0」と「9」が選ばれたのだとか。プッシュホン式電話がすっかり普及してしまった今となっては、「ダイヤルを回す」という言い回しと共に当初の意味を失ってしまいました(但し、間違い電話を防ぐために局番の第一数字として使われていない「0」「9」が採用された、という理由もあったようで、こちらはプッシュホン電話でも有効ですね)。

ところで英語の「dial(ダイヤル)」は本来は時計の文字盤を指しました。そしてさらにこの言葉の語源を遡ると「日時計」の意味。同語源の単語には英語の「day(デイ=日)」、「diary(ダイアリー=日記)」、毎日頑張らねばならぬ「diet(ダイエット)」、フランス語の「jour(ジュール=日、ボン・ジュールのジュール)」やそこから派生した「journal(ジャーナル=日誌)」、「journey(ジャーニー=旅行←毎日の仕事)」などがあります。因みにアナログ時計の針の回転方向は、北半球における日時計の影が回る方向となっています。でも回転ダイヤル式の電話と違って、その高級感でデジタル時計との差別化をはかっているアナログ時計は当分は生き延びそうですね。「時計回り」や「時計の針」という言葉も、私が生きている間くらいは通じるかな?