究極の変化球

カタカナ語の中で、元となった語の種類が最も多いのは「ボール」かもしれません。

まず思いつくのは「球」を表す「ball(ボール)」。お椀を表す「bowl(ボウル)」も同源の単語です。米国のアメフトの大会の名前には「Super Bowl(スーパー・ボウル)」や「Rose Bowl(ローズ・ボウル)」のように「ball」ではなく「bowl」が使われますが、これは試合が行われるスタジアムをお椀になぞらえたものです。「ball」の仲間には他に「balloon(バルーン=風船)」、「bald(ボールド=禿げた)」、「ballot(バロット=投票←かつて投票に小さな球を使ったことから)」があります。

「ball(=球)」と同じ綴りで同じ発音ですがまったく異なる単語が「舞踏会」の意味の「ball」。日本語にも「ballroom(ボールルーム=舞踏場)」として入っていますね。こちらの「ball」には、「ballet(バレエ)」や「ballerina(バレリーナ)」、意外なところでは、本来は踊りのための音楽だった「ballad(バラード)」などの仲間がいます。

一方、お椀の「bowl」と綴りが一緒で語源が異なるのが「bowling(ボウリング)」の「bowl」。こちらはフランス語の「boule(ブール=球)」が変化したものです。フランス語でパン屋さんのことを「boulangerie(ブーランジェリー)」と言いますが、かつてはパンと言えば「丸い」ものだったのでしょう。「そばボーロ」や「丸ボーロ」の「bôlo〔葡〕(ボーロ)」も同源です。この「boule」の指小形が「boulet〔仏〕(ブレ=弾丸)」、英語の「bullet(ブレット)」にあたります。先ほど出てきた「ballet」との対比で、リンカーンの言葉「The ballot is stronger than the bullet.(=投票は銃より強し)」や、マルコムXの演説「The Ballot or the Bullet(=投票権か弾丸か)」のように使われます。日本語では「The pen is mightier than the sword.(=ペンは剣よりも強し)」の方が韻を踏んでいますね。

この「boule」の原義は「bulla〔羅〕(ブラ=泡)」。英語の「boil(ボイル=煮る)」はこの語の子孫です。フランス語では「bouillir(ブイール)」と言いますが、こちらは「bouillon(ブイヨン←煮出しただし汁)」や「bouillabaisse(ブイヤベース←煮て(bouillir)火を止めよ(abaisser))」と言った語を生んでいます。

「ボウリング」ならぬ「ボーリング」と言えば材料や地面に穴を開けることですが、この語の原語は「boring〔英〕(ボアリング)」。この「bore」の兄弟であるオランダ語の「boor(ボール)」も、工作機械の「ボール盤」の名前に輸入されています。さらに「段ボール」や「ボール紙」の「ボール」はまた違う言葉で、こちらは英語の「cardboard(カードボード)」の前半部分が抜け落ちたものです。

以上、球・椀・舞・泡・穴・板と八面六臂の活躍の「ボール」たち、現在行われているWBCではサムライジャパンにもぜひ頑張って欲しいものです。(-人-)

後日談 ― これを書いた翌日、サムライジャパンは見事二度目のWBC優勝を飾りました!