コピちゃんペ!

「paste(ペースト)」と言えば、粉を練ってどろどろにしたものを指し、調味料や練り歯磨き、さらには焼き物用の土など、様々なものを表します。元々はギリシャ語で「大麦で作った粥」を意味していたこの言葉の仲間を探してみましょう。

まず思いつくのはイタリア語の「pasta(パスタ)」。今でこそ乾燥パスタが主流ですが、中世までは"ペースト状"の生パスタだった訳です。実際、イタリア語の「pasta」は、英語の「paste」のようにパン生地や歯磨き粉を含む広い概念を表します。ところで同じくイタリア語で、日本語にもなっている言葉に「antipasto(アンティパスト=前菜)」がありますが、パスタの前(=ante-)に出てくるからかと思えばさにあらず。この「pasto」は「聖書のみことば」に出てくる「pasture(=牧草地)」の親戚で、家畜を放牧して餌をやることから派生した「食事」を表す別の単語です。

フランス語で「paste(d)」に当たる語が、フランス料理の前菜によく出てくる「pâté(パテ)」。フランス語では語中の「s」が消失して、代わりに直前の母音の上に「^(アクサン・シルコンフレクス)」がつくことがありますが、これはその一例です(参考「Agの国」)。「pâte」もいわゆる「パテ」のみならず、「pâtisserie(パティスリー=菓子)」や「pâtissier(パティシエ=菓子職人)」からも分かるように、パン生地も含む練り物を表します。変わったところでは、粉末顔料を練って作る「pastel(パステル)」や、芸術・文学作品などでいろいろな作風を混ぜ合わせる手法「pastiche(パスティシュ)」も、日本語に入ってきたフランス語です。

英語の「paste」には「(糊状のもので)貼る」という意味もありますが、こちらはコンピュータ用語「copy and paste(コピー・アンド・ペースト)」、略して「コピペ」でもお馴染みですね。個人的には「cut and paste(カット・アンド・ペースト)」の略語として、「カトペ」も流行らせたいところです。加藤茶のギャク「加トちゃんペ!」は、付け髭の糊が剥がれやすかったところから生まれたそうで、まさに「ペ!」のイメージにぴったりだと思うのですが…。( -o-)ノ


おまけ ― 日本語にも「口を糊する」という表現がありますが、米もパンもパスタもみんなデンプンということに改めて気付かされます。