とんがりコーン

ダイヤモンドの評価の基準は「carat(カラット=重さの単位)」、「color(カラー=色)」、「clarity(クラリティ=透明度)」、「cut(カット)」の4つの「C」ですが、このうち私みたいな素人が最も気になる「carat」の語源は「keration〔希〕(ケラティオン=イナゴ豆)」という名前の豆。この豆は一粒一粒の重さがほぼ0.2グラムとばらつきが少ないため、分銅として使われていたのです。一方、金の純度を示す単語として「18金」、「24金」といい、「K18」、「K24」と表記しますが、この「K」も「金」の略ではなく「carat」の綴りを変えた形「karat(カラット)」の略です。一説によるとかつて金の取引の単位がイナゴ豆24個分だったため、24カラットが純金を表すようになったのだとか。

さらに、このイナゴ豆「keration」の名前は、豆のさやが角(つの)の形をしていることからギリシャ語「keras(ケラス=角)」に由来します。「triceratops(トリケラトプス)」はその名の通り三本の角を持つ恐竜、「keratin(ケラチン)」は日本語に「角質」と直訳されています。「unicorn(ユニコーン)」や「capricorn(カプリコーン=山羊座)」の「corn」も同根の言葉。パンを角状に焼いてクリームを詰めた「cornet〔仏〕(コルネ)」は私の子供の頃の好物でした。漢字で「角(つの)」と同じ字を書く「角(かど)」を意味する「corner(コーナー)」も同源というのもまた面白いですね。

ここまで来ると、ではアイスクリームを入れる「cone(コーン)」は関係ないの?という声が聞こえてきそうです。こちらは実はギリシャ語「konos(コノス=松ぼっくり)」に由来する全く別の単語で、意味は「円錐形」。誤解している方も多いようですが「corn(コーン=とうもろこし)」で作るわけではありません(普通は原料は小麦粉)。地形学の用語「Konide〔独〕(コニーデ=円錐状火山)」などが同じ仲間です。因みに動詞としての「cone」には「サーチライトで照らし出す」、「道路をコーン(=円錐形の標識)で区画する」という面白い用法があります。

それにしてもハウスが出しているスナック菓子とんがりコーンは、「corn(=角状の)」、「cone(=円錐)」、「corn(=とうもろこし)」の三単語を掛けたすごい商品名なのかもしれません!?


おまけ ― ラテン語系の「C」はしばしばゲルマン語系の「H」に対応しますが、英語やドイツ語で「角」を意味する単語「horn(ホーン)」や「Horn(ホルン)」も「corn(=角)」の仲間。「Matterhorn〔独〕(マッターホルン)」のような尖った山の名、「Alpenhorn〔独〕(アルペンホルン)」のようなラッパ状の楽器の名に使われます。車のクラクションのことも「horn(ホーン)」と言いますね。「Horner(ホーナー)」という野球選手がいましたが、彼の先祖は角細工職人、または角細工商人、あるいは角笛吹きだったのでしょう。