アルよもやま話

皆さんがお使いのキーボードの下の方に「Alt」と書かれたキーがあるかと思います。これは「alternate(オルタネート)」キーの略で、このキーと文字キーを同時に押すことにより、単独で文字キーを押した場合とは「異なる」効果をもたらすキーです。この「alternate」の仲間には「alien(エイリアン=異星人、異邦人)」や「alibi(アリバイ←異なる場所)」、「alias(エイリアス=別名)」、「a」が「e」になっていますが「else(エルス=他の場合)」などがあります。

スペイン語の冠詞「el(エル)」やアラビア語の冠詞「al(アル)」もこれらと同源です。元来は「(自分とは異なる)向こう側の」という指示語でしたが、次第に定冠詞としての地位を確立しました。スペイン語は男性単数形が「el」、女性単数形が「la(ラ)」、男性複数形が「los(ロス)」、女性複数形が「las(ラス)」と変化しますが、それぞれ「El Salvador(エル・サルバドル=救世主)」や「El Dorado(エル・ドラド=黄金郷)」、「La Paz(ラ・パス=平和)」や「La Plata(ラ・プラタ=銀)」、「Los Angeles(ロス・アンジェルス=天使)」や「Los Alamos(ロス・アラモス=ポプラ)」、「Las Vegas(ラス・ベガス=牧草地)」などの地名に含まれています。

一方のアラビア語の冠詞を含む単語には、「alkali(アルカリ)」、「alcohol(アルコホル=アルコール)」、「alchemy(アルケミー=錬金術)」の化学用語、「algebra(アルジェブラ=代数)」、「algorithm(アルゴリズム)」の数学用語、「almanac(アルマナック=暦)」、「Altair(アルタイル=鷲座の一等星)」、「Aldebaran(アルデバラン=牡牛座の一等星)」の天文用語などがあり、中世にヨーロッパよりもアラビア世界の方が科学が進んでいたことを物語っています。イスラム教の神「Allah(アラー)」も英語に直訳すれば「the god」の意味で、唯一神であることを示唆しています。テロ組織「Al Qaeda(アル・カイダ=基地)」やカタールのテレビ局「Al Jazeera(アル・ジャジーラ=半島←カタール半島)」の名もすっかりお馴染みですね。

因みにアラビア語で「Alexandros(アレクサンドロス)」大王のことを「Iskandar(イスカンダル)」と呼びますが、これは最初の「Al」を冠詞と勘違いしたことによるのだとか。「イスカンダル」と言えば宇宙戦艦ヤマトが目指した天体。アレクサンドロス大王よろしくアラブ世界を蹂躙するアメリカに追随するヤマトの自衛隊、コスモクリーナーを持ち帰るどころか劣化ウラン弾の残留放射能に被曝しないよう、切に祈っています。


おまけ ― タリバン武装勢力の本拠地であったアフガニスタンの「Kandahar(カンダハル)」も「Alexandros」の意味です。